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税理士からのアドバイス

第19回 消費税の軽減税率

Q.消費税率の引き上げに伴う逆進性は、生活必需品の税率を低くすれば解決できると思います。生活必需品に対して軽減税率を設けることに何か問題があるのでしょうか。?

A.食料品等の生活必需品に対する軽減税率は、欧州各国で取り入られており、逆進性緩和対策の代表例といえます。消費者にとってわかりやすく理解を得られやすい方法といえるでしょう。しかし、軽減税率も万能な制度ではなく、導入にあたってはいくつかの問題点があります。

1.生活必需品の線引き

生活必需品というのは感覚として理解できても、実際には極めて難しい判断を伴います。軽減税率を導入している国でもその線引きには苦労しているようです。

フランスではバターは軽減税率であるのに対しマーガリンは通常の税率であり、チョコレート製品のうちカカオの含有量50%未満のものだけが軽減税率の適用になります。また、カナダではドーナツを6個以上買うとゼロ税率になるので、見知らぬ人が集まってまとめて購入するというようなことが実際に行われているそうです。

実際に軽減税率を導入するとなれば、このような線引きの問題は無数に存在します。軽減品目の合理的な選定は難しく、利害関係者間で政治的な綱引きが行われることが容易に想像できます。欧州ではこの線引きを巡って訴訟も頻発しているといいます。

2.税率の大幅アップを招く?

生活必需品に軽減税率を適用した場合には、当然のことながらその軽減分だけ税収が減ることになります。ある一定の税収を得ようとするならば、生活必需品以外の税率をより高く設定する必要があります。

全体の消費のうち3分の1が生活必需品に対する消費だと仮定します。例えば、生活必需品を5%に据え置いたまま、消費税率を一律10%にアップした場合と同じ税収を得ようとするならば、生活必需品以外のものに対する税率を12.5%にしなければいけないということになってしまいます。

生活必需品 ・・・ 1/3×5%≒1.67%

生活必需品以外・・・ 2/3×12.5%≒8.33% 合計10%

3.高額所得者にもメリット

軽減税率のメリットは高額所得者にも及びます。高額所得者ほど多くの食料品等を消費することを考えれば、逆進性緩和の効果は乏しいのではないでしょうか。

4.事務負担の増加

軽減税率を導入すれば、事業者の事務負担が増加します。商品によって税率が異なれば小売店の対応は煩雑になります。小売店以外の事業者でも、購入するものの中に税率が異なるものが混在することになり事務負担は大幅に増加するでしょう。消費税の事務処理に携わる方であればその煩雑さは想像できるのではないかと思います。

※ 逆進性=18回をご参照。

法人なかま 2010年9月号掲載