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税理士からのアドバイス

第11回 相続税は不思議な税金

Q.相続税に関して次の1.から3.のうち誤りはどれでしょうか。

  1. 相続税がかかるのは、100件の相続のうち4件程度である。
  2. 相続税の税収は、所得税の10分の1程度である。
  3. 最近、諸外国では格差を是正するために相続税を強化する傾向にある。

A.誤りは3.です。

1. 相続税がかかるのは一部の資産家

親から財産を相続した人は皆相続税を払わなければならないと思っている人は多いようです。しかし、財務省の統計によれば、平成18年に死亡した108万4,450人のうち相続税がかかる財産を残した人は4万5,177人で、その割合は4.2%です。相続税がかかるのは100人に4人なのです。意外に少ないと思われるのではないでしょうか。

この割合をもっと上げるべきだという意見があります。しかし、そもそも相続税は一部の資産家を課税の対象にして富の再分配を図るように設計されているのです。今の相続税の仕組みとなった昭和33年以降、バブル期を除けばこの割合は1?5%程度で推移しています。なお、この割合は死亡したすべての人を対象にしたものですから、たとえば60歳以上の男性に限ればもっと高い割合になることに留意しなければいけません。

2. 相続税の税収

平成20年度の相続税(贈与税を含む)の税収は1兆4,549億円です。所得税の税収は14兆9,850億円ですから、ちょうど10分の1です。これは酒税と同じくらいの税収です。ちなみに、消費税は1%あたり約2兆5,000億円の税収がありますから、税収面だけで考えれば、消費税率を0.6%引き上げれば、相続税・贈与税の税収を賄うことができてしまうことになります。

相続税を払うのは100人に4人、税収もさほど多くない。しかし、相続税への関心は高く書店の税金コーナーには相続税の節税本が並ぶ。つくづく相続税は不思議な税金だと思います。

3. 諸外国の相続税の動向

最近、格差を是正するために相続税を強化すべきという議論を耳にしますが、外国ではどうでしょうか。近年、先進国で相続税を強化している国はみあたりません。むしろ、相続税は廃止や縮小の方向にあります。たとえば、イタリアは2001年に相続税・贈与税を廃止しました。また、アメリカでは2002年から遺産税・贈与税を段階的に縮小しており、2010年にはいったん遺産税が廃止されることが決まっています(ただし追加立法がない限り2011年には遺産税が復活)。フランスでも2007年に相続税の大幅減税が行われています。

相続税の課税根拠やその仕組みは各国様々ですが、税収が少ないわりに徴税のためのコストが大きいというのは各国共通の悩みのようです。

法人なかま 2009年12月号掲載