ふるさと回帰の受け皿づくり
葛西 充 さん (株式会社 グッド 代表取締役)


豊富な法律知識をベースに
新しい神田を創造する葛西 充さん

会 社 名 株式会社 グッド
主な職種 不動産業





旧千桜小を背にしたグッド社屋


故あって故郷を出て、都会に暮らして数十年、夕刻故郷の方の空を見つめ独り涙する。ちょっと古いセンチメンタリズム。こういう人たちがいる一方、逆に都会の空を見つめて郷愁に浸っている人たちがいてもおかしくない。

お膝元である神田は、高度成長期以降、ビジネス街としての土地活用が盛んなのはご存知の通りである。あちこちで再開発の動きは今も続いている。もとが商工業地兼住宅地だった地区だから大方1件あたりの敷地はそう大きくはない。仮に1件ごとが中層ビルを作っても家族に居場所を確保することすらむずかしい。特に生活必需品を販売していた商店は住民が不在になったら商売にならない。結果住民たちの多くはデベロッパーに土地を渡し、郊外へと移転して行った。

東京近郊各地で新しく広い居を構えて住んだ元神田住民もそろそろ老齢に差し掛かっている。いつしか両親は亡くなり、子どもたちは家から出た。近所との付き合いもそこそこだ。子ども時代の記憶がそこにはない。自分が孤独になっていることに気づく。なつかしい神田に帰りたい。では帰ればよい。受け皿はある。


▲としまち研が関わる神田界隈の5棟
桜ハウス KTハウス コニファー
ハウス
コムズ
ハウス
クレアール
神田

葛西充さんが社長をつとめる株式会社グッドは不動産業である。昭和47年9月に父上が設立し、葛西さんは平成8年に受け継いだ。その当初グッドはいわば街の不動産屋さんだったのだが、後に大きく事業を拡大する。まず「都心居住促進研究会」が設立された。葛西さんはそのメンバーの一人であった。この会は2000年にNPO法人「都市住宅とまちづくり研究会(としまち研)」の設立母体となった。葛西さんはその役員である。

としまち研の主張は「人がいなければ街ではない。人のつながりがあって街になる。」である。事業はコーポラティブ住宅・共同建替え・団地マンション再生・老齢者向け福祉住宅の4つ。いずれもその場に住みたいあるいは住み続けたい人たちが建設組合を作り、土地の確保、設計のコンセプト、資金の確保、建設会社への発注まですべてをする。としまち研はその協力あるいは主催活動をしている。 「子どもの声がする街に戻したいですね」と葛西さんは言う。葛西さんの求める街は人通りのない高級住宅地ではなくて、人の息遣いが感じられる下町神田である。

老朽家屋住まいの暗い目の独居老人が再び明るさをとり戻し、人の間に生きていることに感謝ができる、社会活動に参加できる、そんな環境が再構築できるならそれはすばらしいことである。

株式会社グッドはいま再開発準備中の千桜小学校跡地ブロックにある。葛西さんはいずれここにできる高層住居棟の中に入る。近年神田で建てられた高層住宅には食料品など生活必需品を売る店がない。どこの地域でもこういう店を作ると建物が、街が汚れるという主張があるのも事実だ。生活するのに大変では、そうお聞きしたら、「これから作る再開発地にはスーパーも入るようですよ」との事。そこは神田にふさわしい人のふれあう場所となるだろう。

(2008年9月18日:取材)