内神田はまた村に戻った
児谷 昭幸 さん (児谷板金工業株式会社 取締役会長)


趣味も仕事も極める児谷さん

会 社 名 児谷板金工業株式会社
主な職種 空調工事・排気ダクト製作





廃校となった千代田小学校
から譲り受けた水槽





神田祭で子息、孫と



児谷板金工業本社ビル

突然、炬燵から猫が顔を出した。名をカンナと言う。毛並みはすこぶる良い。ちょっと太り気味である。誇りにあふれた態度で悠々と歩く。気になるのは右耳の先が三角に少し欠けていることである。

この猫は初めから飼い猫であったのではない。元、野良猫であった彼女はある日児谷板金工業の地下作業室に住み着いた。それが児谷板金工業会長、児谷昭幸(てるゆき)さんの飼い猫になった。ただ不妊手術はされた。その証が右耳の欠けである。児谷さん家族は野良猫を捕獲し不妊・去勢手術をして、元のテリトリへ返すという運動を続ける「ちよだニャンとなる会」の会員である。猫は放っておけば数が増えるから街の害になる。かといって殺生する訳にはいかない。猫の命と街の衛生の両立を図るのがこの会の使命である。

カンナ
愛猫カンナちゃん   ちよだニャンとなる会の会報誌「猫と共生する街」

児谷板金工業は祖父の代に日本橋室町で仕事を始めた。時期ははっきりわからないが大正年間だ。もう80〜90年は経っている。
創業時はトタン・ブリキの屋根葺き工事や台所の流し台の製造だった。

法人化は児谷さんの代になってからで昭和56年である。仕事は空調ダクトの製造と取付工事となった。顧客は居酒屋やファーストフードのフランチャイズ本部で各店舗の新規開店や改装の工事を請けているから安定している。

さて、児谷さんの趣味は数が多い。しかも、深く掘り下げるのである。まずは東京湾での海釣りから始まった。狙いは鯵。続いて狩猟でこの獲物は鴨・雉・雉鳩。
さらに自宅屋上での皐月・蘭などの花、胡瓜などのの野菜作り。皐月にいたっては実生、つまり種から育てたという。そして熱帯魚。自宅リビングの窓の下には壁から壁まで低い棚が4mほどしつらえてあるが、実はこれ水槽を載せた台である。
いま棚には水槽は1つだけ。熱帯魚は熱帯魚の王様といわれるディスカスが中心だったが、1階の入口に水槽をおいておいたところ、ある年の連休に根こそぎ持っていかれた。これを契機に水槽の魚は金魚になってしまったとのこと。この4つの趣味が10年の周期で移り変わってきた。

いまは屋上菜園での収穫が楽しみで、ご近所に分けている。もらう方も生産地が地元でしかも知人の家であると言うことは不安もなく一番のご馳走である。ご近所付き合いも昔のままだ。

内神田は神田のほかの地区に較べると住まっている人が多い。町会の役員が50人ほどいる。「もともと職人の街でしたからね」。
仕事と生活が密接に絡み合っているから地縁社会がしっかり形成されているのである。
児谷さんもここ30年ずっと消防団員であり、厚生部役員として街の運営に携わっている。
「どこに、どういう、何をしてる人が住んでいるかは町中の人が互いに知っているし、もし町の幼児が見かけない人と手をつないでいようものならすぐわかるから犯罪も起こりにくい。内神田は村です
よ」。
                   (2008年1月25日:取材)