精神世界を支える物つくりの技
小山 雅司 さん (株式会社 小山弓具 会長)



「武道としての『弓道』を中高教育に広め、
日本人の『義』の意を広く理解してほしい」と
語る小山さん。

会 社 名 株式会社 小山弓具
主な職種 弓具製造販売
URL http://www.koyama-kyugu.com/





小山弓具本社ビル






蒙古弓のデザイン



和弓のデザイン



本社弓矢四国ビル入口とキャラクター入りの看板

「江戸に三代住んだら江戸っ子」。
この判定基準と照合すると、「小山家」は紛うことなく江戸っ子である。その次第は以下のとおり。

徳川家の家臣として三河の住人だった先祖が、家康が江戸に幕府を開いた慶長8年(1603)に家康に伴って江戸に入府、以来薪炭調達のお役につくこと7代。
小山弓具店当主小山雅司さんは言う。
「武士はたしなみとして武具をメインテナンスする技能を持たなくてはならなかったんです」。

なぜなら戦場の近くに修理業者がいるとは限らず、戦いすんで日が暮れたあと、刀を研ぐ、弓の弦を張り直すなどの手入れから破損部分の修理など、自らの手で処理したからである。
で、弓製作を心得ていた8代目からは弓の製作を始めた。
以上小山家は現在まで都合16代が江戸に住んでいる。

小山弓具店の弓製作はこの間数度、新しいところではGHQによる製造禁止などの社会情勢から製造を断念する時期があったが、そのたび復興し今業界では押しも押されぬ地位を築いている。小山さんが先代の手伝いを始めたのが小学生のころ。以来50余年、いまも現役の弓匠である。小山さんの生い立ちは「小山弓具店」ホームページに詳しく紹介されている。

西洋で弓は狩猟具・武器である。だから的に当て点を競うという方向に進んできた。ところが日本人は「弓道」に発展させた。「座って瞑想する座禅に対して、弓道は立禅といいます」。静かに矢をつがえ射る。射終わって、その結果を静かに内面で評価し自らの力量・心根を顧みる。決して人に見せる演技ではない。一喜一憂の感情を顔にだしたり「万歳」などと動作に見せることなどない。「端然たるその姿は人格を髣髴と感じさせ見るものに感動を与える。弓の力量とはそういうものです」。

弓の製作者はこの精神世界を形作る道具を作っているのである。いい加減な仕事はできない。小山家の歴史と先代の薫陶がそうさせる。全霊を吹き込んで作る。当然社員教育はきびしい。今の時代に青春を送っている者たちには理解しがたい仕事かもしれない。だからといって時代に迎合して弓を作るのでは意味がない。

小山さんは決して古を踏襲するばかりではない。「世にある老舗が維持されているのは1代ごとになにか新しいことをしているのですよ」。竹や木は弓の素材としては反発力と強度に弱く破断しやすい。そんな和弓の改良のためにグラスファイバーを挟んだ弓を開発したのはそのひとつ。比較的安価であり学生界から支持されている。

ところで和弓は世界で唯一上長下短である。この形は銅鐸の庭に鋳込まれているくらいだから1800年以上の歴史がある。では上長下短の効用は何か。
射た後の弓の振動はそのあたりが中心となるからぶれないという説があるが、「弓の軌跡がそり上がります。つまり遠くへ飛ぶ」のだと小山さんは言う。
匠の知識は深い。



(2007年9月5日:取材)