カンツォーネを唄って40余年
大塚隆康さん (株式会社大隆商事 株式会社大塚商店 代表取締役社長)


本業は「紙屋」の三代目です、
という大塚さん。

会 社 名 株式会社大隆商事
株式会社大塚商店
主な職種 不動産賃貸、各種紙の販売



創業者・大塚福太郎翁と当時の店頭。
今年、創業93年になる。



カザルスホールで
ジョイント・リサイタルも開いた。



世界の名テナー、ステファーノと
感激のツーショット。30歳代の頃。
 今から33年前、昭和48年に創業60周年を迎えた時の「会社案内」を見せていただく。 表紙の絵は創業当時の店頭か、「和紙商大塚商店」の看板が掛る。 二代目社長大塚春雄氏の挨拶が掲載され、同社の60年の歩みがよく解る。

 「大正2年に祖父が芝大門で和紙、加工紙の販売を始めました。 震災を経て、神田錦町に大塚紙店を出したのが昭和8年です。 昭和30年から40年代は“紙は文化のバロメーター”といわれた時代で、今考えると全盛の時代でした」

 その頂点ともいえるのが創業60周年、この時本社新社屋(6階建てビル)も竣工させている。 周囲にまだ目立ったビルのない時代である。 そして、バブルの時代を経て紙の業界は、生き残りを賭けたサバイバルの時代に突入していく。

 「紙、印刷は不況業種で、何軒も仲間が撤退しました。大変な時代になったと思います」

 さて、中学の頃からおよそ40余年、大塚さんの人生にとって、もはや切り離せないものになっているのが「声楽」。 今年の6月、14回目を迎えた「太陽カンツォーネコンコルソ」で、見事4回目の入賞を果たす。 約300人が1次、2次審査を経て50人に絞られ、本選に臨んだ結果、 豊かな声量と細やかな表現力が評価されたのだ。

 「年に1回開かれる全国規模のコンクールで、アマチュアが参加できる唯一のものです。 9回目に初入賞して、10回、12回目、そして今年。 年齢制限も経験も関係なく、誰でも参加できます。
私はテノールでカンツォーネ・ナポリターナ部門の入賞です」

 大塚さんが歌に目覚めたのは一ツ橋中学の頃。 音楽の先生から“素質があるから将来は声楽をやったらどうか”と薦められた。 高校に入ってから芸大の先生について本格的に習い始める。 しかし、音大には進まず慶応大の商学部へ。家業を継ぐためだった。 紙を商う大塚家に音楽的環境はなく、大塚さんは“突然変異”なのだろうという。

 「歌はあくまでも楽しみです。大学時代は合唱団のソリスト、 社会に出てからはジョイント・リサイタルを開いたり、コンクールに参加したりして歌ってきました。 イタリアの歌曲中心に持ち歌は50曲くらいあります」

 また聴くことにも熱心で「心の師」と仰ぐイタリアの名テノール歌手、ディ・ステファーノは 来日の度に聴きに出掛け、楽屋でサインをもらうまでになった。

 運転しながら聴くこのジャンルのCDは優に300枚を超える。

 「歌はとても健康にいいですよ。腹から声を出す、独特の呼吸法がある。 きっと長生きできます。健康法は、のどに悪い煙草は吸わないことぐらいで、特に何もしていません。 月に何回か教室に通うだけで、練習らしい練習はしません」

 大塚さんが人生で常に思っているのは頼まれたことはできるだけ希望に沿ってあげて、 しかし、決して「出しゃばらないこと」。そして歌についてはもちろん生涯続けるつもりでいる。
(2006年9月28日取材)