グルメから“長寿食モード”に
黒澤秀光さん(有限会社黒澤商店 代表取締役)


バランスのよい食事が健康の秘訣という
黒澤さん


会 社 名 有限会社黒澤商店
主な職種 葬祭業、理髪業





黒澤さんは理髪業も営んでいる。
義理の姉から受け継いだもので、法人化は葬祭業より歴史がある。
昔ながらの散髪屋さんも最近はめっきり少なくなった




息はぴったり。黒澤社長(左)と
三代目を継ぐことになっている娘婿の雅典さん




ここの焼き鳥と親子丼はおすすめという
「鳥つね」(外神田5丁目)

 黒澤さんのご出身は信州の松本。馬刺しと蕎麦のふるさとだ。縁あって婿養子となり現在の仕事に就いて、二代目を継いだのが昭和39年のことだ。しかし、黒澤葬儀社の歴史は古く、創業90年を迎えるというから大正の初め頃からである。

 お酒を飲み、美味しいものを食べ歩くのが大好きだった黒澤さん、昔はほとんど毎日のように、仕事が一段落すると夜の町に出ていた。帰宅は午前様。「肉だろうが魚だろうが、何でもござれ。酒は最低でも5合。付き合い以外は独りが好きで、上野とか浅草に出掛けることが多かった」。

 もちろん、ご近所さんにも美味い店は多い。以前、同じ町内にあった焼き鳥の名店「鳥つね自然洞」、松阪牛のすき焼きを商う「いし橋」、寿司の「桜荘」「寿司兼」、秋葉原の「鳥万」などなど。数え上げたらきりがない。

 「昭和40年代、若くて元気でしたからね。当時ボウリングが盛んで、青山に日本で初めてのボウリング場ができて、ここには随分通いました。凝った方です。12時過ぎて帰ってきても、まだ寿司屋は営業してる。先代とは懇意にしていたので「寿司兼」で空腹を満たして家路につく、そんなことをして遊んでいました」。

 「いし橋」も有名で、町会の新年会などに利用させてもらっています。「鳥万」はもつ焼きで知られる。ありとあらゆる部位が置いてある。しかし、何といっても黒澤さん一番のお気に入りは「鳥つね」だ。

 「ここの主人がなかなかの凝り性で、酒も吟味されているし、鶏も全国を歩いて地鶏の美味いのを探してくる。本店が湯島天神の前にあって、テレビの美食番組でよく紹介されています。秋葉原のビルに出た店は行列ができているらしい」。

 こうした“無理”(?)が祟ったのか、10年ほど前黒澤さんの食生活に大きな転機が訪れる。胃を全摘出するという大病を患ってしまうのだ。

 「手術直後は飲み込むのが至難の業。少しづつ何回かに分けて食べた。腸が胃に変わる道理はなく、徐々に拡げていったのです。医者の言うことはよく聞きました。泡の出るビールは避ける。肉は鶏か魚だけ。野菜や果物を摂る、などです」。

 食事の時間は、昔は10分だったのが30分に。よく噛んで、腸が吸収しやすくしてやる。お酒は昔の五合を1.5合に減らした。出来るだけ三食を規則正しく、空腹感がなくても食べるようにした。当然栄養のバランスを考える。そして、くよくよ考えないことを心掛けた。ストレスが一番「腸」に悪いとされるからだ。

 災い転じて福ではないが、黒澤さんは大病のおかげで、いま、大好きな焼き鳥を(レバーを始め、よく焼いた皮や野菜を交えて)10本も平らげるまでになっている。ゆっくり美味を噛みしめ、健康の有難さに感謝する。仕事面では二代続きの娘婿との二人三脚で、日々の仕事を忙しくこなしている。